田中慎弥『共喰い』

ま、芥川賞以上に、記者会見で有名な人になっちゃってますけど。で、その後で読むのは負けだなぁとも思ってるんですが(ちなみに、伊集院さんの言っていた“記者会見を止めてくれって言っているのに、本心ではないと解釈して止めない&それを正当化するマスコミの気持ち悪さ”ってのはとっても同感なんですが、+αで本人には“止めてほしいのは本心だけど、じゃそれそのまま言っちゃうのって面白いかも”という計算も多少はあると思ってますが)。いろいろあって購入することになっちゃったんで、それなら、と。
で、正直、この表題作の『共喰い』はどうなんでしょ。個人的な感想を言えば、エロと暴力とカオスを書けば“ザ・日本の純文学”でしょ?ってことだけの作品の思えてしまって。物事を表現するときの言葉の使い方とかが評価されてる面もあるようですけど、上記印象をもってしまってからは、その辺も入ってこなかったなぁ。
ただ。もう一遍収録されている『第三紀層の魚』の方は好きです。世界観というか。時間の流れがというか。少年の変わってほしくないけど、周りの大人によって動かされてしまう自分(たち子供たち)。それを、なぜか冷静に考えているその少年の心理描写。とか。なんか好きでしたね。でも、こっちは芥川賞取れなかった方の作品なんだよね。うーん。これによって『共喰い』の方だけが評価されてしまうのは残念な気がする。俺が、この本を人に貸すときに、↑の感想を言っても“『共喰い』面白かったんだぁ”って思われちゃうだろうし。うーん。