伊園旬『ブレイクスルー・トライアル』

書店に平積みになっていた文庫でお勧められていた本。最近デスゲームモノの本が続いていて、となると“脱出”するのがその目的だったりするんですが、その逆の“侵入”モノも面白いかもって思い立って衝動買いした本。…あ、ちょっと嘘。侵入モノも面白いかな?って思って、その場で携帯でamazonのレビュー見てみたら、いまいち評価が分かれている内容であるものの“中古で買うなら”みたいな事が書いてあるのを見て、あ、そういえばさっきブックオフでも見たぞこの本ってのを思い出し、ブックオフに戻って文庫版の古本を350円で衝動買いしたという、ね。衝動買いじゃないって、それ。かなり冷静だから、俺。
最新技術の粋を尽したセキュリティを施した企業の研究所ビルに侵入し、ミッションをクリアしたら1億円というイベントに学生時代の友人に誘われ参加することになったこの企業の元社員を主人公にした話。自分の勤め先もいろいろあって最近セキュリティはやたら強化しているし、となると生体認証とかのシステムについてもいろいろ経験したりもしてるので、これをどうやって破るんだろう?って考えながら読むのはなかなか面白いよなぁ、って感じだったんですけどね。
ただ、その話の過程でこの主人公2人にはそれぞれ大企業のトップが絡む過去があったり、その企業同士は因縁があったり、その結果実はこのゲームのミッションをクリアするのとほかにこの研究所に侵入する目的があったり、またこのトライアルに参加するライバルチームについてもそれとは別にこの研究所に侵入する目的があったり、その結果今回このトライアルに参加している3チームはどこもミッションをクリアする気がなかったり、さらには主人公が協力を依頼した同じ元社員の裏切りとか、研究所管理人の家族がライバルチームと対峙する存在になったりとか、とにかくこのメインストーリーに派生する話を思いっきり広げて単行本5巻分持つくらいのネタにしておきながら、全然使いきれてないんですね。その結果、研究所の1階から侵入してミッションは4階にある(ちなみにこのチームの本当の目的は5階)となると、ブルース・リー死亡遊戯よろしく1階から順にセキュリティを破って4階に登っていくのかと思いきや、それも書ききれずに1階からフツーにエレベータで4階登れちゃうし。なんか、壮大なストーリーをもの凄い下手くそな編集のダイジェストで見せられてるような話でした。
うーん、重ねて設定と主人公のキャラは悪くはないと思うので、残念な感じか。てなことで読了後、最近、自分がどの本読んでどの本は買ったけどそのままで…とかわかんなくなってきちゃってるので、読んだ本は某サイトに非公式で登録してるんだけど、登録のために検索してみたら…、ん?『ブレイクスルー・トライアル2』??続編が出るの?これ。あ、出たのね。しかも今月。そーゆーわけで書店で平積みになってたのか。で、紹介記事見ると、こっちは余計なライバルチームもいないし、今回の主人公2人による純粋な侵入トライアルものみたいなのか。であれば、今回のよりは面白いはずなんだよなぁ。でも、このもやもやな読後感の本の続編を読むか?俺。ただ、単行本じゃなくって文庫だし、宝島社文庫お得意のすんごい薄っぺらな前後篇に分けちゃう系でも無いみたいだし、手に出しやすいトコではあるんだよねぇ(単行本ではとても出せない出来でしたって話もあるけど…)。この流れで読まないと、たぶん時間をおいては手は出さないと思うし。どうする?俺。買うか??