土橋真二郎『生贄のジレンマ』

先週読んだ『左90度に黒の三角』があまりにも…だったため、口直しにと思ってる時に、そういえばコレ系の本をamazonで検索すると“この商品を買った人はこんな商品も買っています”に必ず出てくる本があったな、と。評価も高かったんじゃないかしら?と思い、書店で探してみる。(上)(中)(下)豪華3巻組み。昔の伊集院さんのフリートークじゃないけど、最初に行った書店では(上)(下)の2冊しか在庫がなく、ただ自然に書棚に置いてあったので*1あやうく2巻組みと思って買いそうになる。さすがにそこでは(中)の存在を思い出したのですが、結局3巻全てを取り扱っている書店はなく、2店に跨って購入。なんでこんな在庫状況になっちゃうんだ?こーゆーのって、みんな(上)を読み終わった時点で改めて目についた書店で(中)を買う、みたいな感じなの!?
ある高校の3年生、学年全体が不条理なゲームに巻き込まれる。ここにいる全員は死にます。ただし、制限時間までに自ら生贄として身をささげる人が出れば残りの人は助かります。また、クラスで一人生贄を選出した場合はそのクラスの残りの人は助かります。といったルールの下で、自ら死を選んで残りの皆を助けるか。誰かを殺して自分は助かるか。どちらも選択せずに全滅となるか。という葛藤の中でどのように行動するのか!?的な話。わかりやすく言うと『バトルロワイヤル』の設定をちょっと借りてきて(学校単位で殺し合いをさせられる、体に装着させられたバンド(『バトロワ』は首、この本は腕ね)で行動を制御される、等)、その中でジレンマゲームを実際にやったらどうなる?みたいな話ね。どうも、ほかにも“人狼ゲームを実際にやってみたら”的な本も書いてるらしいし、この作家はある設定を持ってきて、それが実際に起きたら?みたいなアイデアから突っ走る感じの人なのかしら。
で、この話も『バトロワ』よろしく“同じ学校の中に、こんなに凄いことできる奴が複数いるかぁ?”ってなくらい各クラスにキャラの立つ奴らが居て、そいつらが中心に話が進んで行く感じ。で、それぞれこのゲーム的な状況に対してどういう態度をとるかというスタンスの違いがあって、そこも面白いトコではあるのですが。ただ、わりとこの“スター”同士が仲良かったりするので、対立する構造になるよりは共闘する感じになり、ちょっとそこは『バトロワ』とは違うとこ。そうすると誰かのキャラに肩入れして“自分だったら”を考えるという感じにはならないんだけどね。あ、あとそれぞれのキャラが感情移入し難いってのもあるけど。奴らわりと“え?ここでなんでそういう行動とるの?”的な感情移入し難い行動してくれるので。極限状態の中で、クラスのほかのメンバーや自分の身の安全をそっちのけで昔の思い出話はじめちゃったり(うーん、ここは難しいトコですが。どーゆーのがリアルなのかって正直わかんないし。ひょっとしたら極限状態になると人間そうなっちゃうのがリアルなのかもしれませんが…)。
うん、全体を通しては面白かったです。実はこれ、制限時間は1回ではなく、繰り返し型のジレンマとなるため、その都度その都度で“自分ならどうする?”を考えてみたり。で、ゲーム中には明確なゴールが示されないため、最後の一人にならなきゃいけないのか?ある一定の期間逃げ切ればいいのか?そうだったらどうする?といったことも複合的に考えなきゃいけないし。さらに、ラスト(次の段落行くまで、若干ネタバレしますが)で、正しく逃げ切るパターンと裏から逃げ切るパターンをそれぞれ作って、どっちが正しかったのかはご想像に…的なところもちょっと好きです(いや、わりと前半でゲームマスターの言葉の中に“これ、裏ルールでの逃げ方あるんじゃないの?”って思わせるところがあって、その隙を探しながら読んでたからかもだけどね)。主人公たちの場の状況を読まずに展開する回想シーンと、唐突に始まるエロシーン×2が“これ必要か?”って感じがして、それがなかったら(上)(下)2巻で収まったんじゃないの?って気は多少しますが、概ね面白かったです、はい。
ちなみに、なぜかこの話読んでいくにあたっては、主人公たちのモデルになる有名人が自然と頭ン中に浮かんで、ビジュアル込みで脳内展開していたのですが。その自然発生的に頭の中で生成されていたモデルが、篠原⇒スリムクラブ真栄田、氷山⇒室伏広治、藤林⇒大森南朋、理香⇒高尾晶子*2、レイ⇒矢敷姉妹のどっちか、涼子⇒柴咲コウ*3、優美⇒綾瀬はるか*4。これじゃ、絶対映画化は無理だよな。特に、男のキャラで引っ張ってかなきゃいけない話なのに。おまけに“高校生”って設定誰一人として踏襲しきれてないしね。。。

*1:そりゃそーだ!

*2:うわっ、トゥナイト2だ!

*3:おそらく映画版の『バトルロワイヤル』で彼女が演じた役の影響かと…

*4:こっちはおそらく『インシテミル』で彼女が演じたとされる役の影響。映画はみてないけど…