折原一『倒錯のロンド』

ここ1〜2年くらい、なにかと盗作騒動とかが話題になる際になにかと耳にしていた書名。折原一の前に読んだ本が期待しすぎちゃった結果“う〜ん…”という感じだったんで、ちょっと二の足踏んできたんですが、また薦められてしまったのと、ちょうどそのタイミングでブックオフで見つけてしまったので読み始めてみた。新人賞に応募しようと執筆した推理小説が盗まれ、その作品が他人の名前で新人賞を受賞してしまったことから、原作者と盗作者の作品を我がモノにしようとする駆け引きが…といった話。
もう折原一ってだけで、叙述トリックを疑う人もいるくらいなので、この作品もいまさら隠すことは無いんですけど、このトリックが誰かが意図したものではなく(ま、叙述トリック自体、元々劇中の誰かが仕掛けるものじゃなく作者が仕掛けるものですけど…)、結果トリックになっちゃってました的な感じで、そりゃあさすがに予想はできないですわ。たしかに最後の最後で急に知らない“名前”が出てきたってわけでもないしね。途中で“それは出来過ぎでしょう”ってくらいの偶然が混じってましたけど。
あと、タイトルにもある様に、トリック以外にも主人公の精神が倒錯していき、その壊れていく恐怖ってのもウリなんですけど、コレはやはり主人公に思い入れが出来ると追い詰められる恐怖でどきどきしながら読み進める感じになるんでしょうけど、なんか壊れっぷりの進行が早すぎてついていけなかったり。むしろ、やばい人を観察してる楽しさ(電車の中で車掌と同じタイミングで車内アナウンスしてる人を遠巻きに見てる感覚?)で読んでしまいました。
で、いよいよこの本を評するときにどこでも言われてる“驚愕のラスト”なんですけど。あのぉ、あの最後の2〜3ページって要る?。なんか『東京大学物語』のラストを見てるみたいなんですけど(『東京大学物語』読んだことないですけど。聞きかじりの知識で突っ込んでますが)。その前で終わってくれてたら個人的には満足だったんですけどね。どうもこの作者とは面白いところの感覚が合わないようで、ただ本自体はなんか意図した所と違ったとことで楽しんではいたりして、それってトンデモ本の感覚なんじゃないかと…。