乙一『失踪HOLIDAY』

先日kuresekiさんからのコメントで、買っておいて読んでないこの本の存在を思い出しあわてて引っ張り出して読み出す。世間から引きこもるために一人暮らしをはじめた僕とそこの家にいるらしい先住人の幽霊との交流を書いた『しあわせは子猫のかたち』と、そりの合わない継母への不信と喧嘩を原因に失踪し、とは言っても実は屋敷内の使用人の住むはなれに忍び込んで…という『失踪HOLIDAY』の2本の中篇を収録した文庫。
(私、あまりライトノベル経験値の少ない人間なんですが)正統派ライトノベルという感じのストーリー。そこは、ホラー作家としての性格が根底にある乙一なんで、そん中にきちっと“事件”を盛り込んでくるんですが、特に『しあわせは子猫のかたち』なんかは、これ書いてたらそりゃあ“せつなさの達人”って呼ばれちゃうよって感じですか。ま、主人公が人になるべく接しないように生きていこうとしたり、なるべく日光があたらない部屋で生活しようとするあたりは乙一テイストなんですけどね。あと、幽霊が落語が好きだったり月曜深夜になるとラジオをつけるなんて設定なのは、さすが『深夜の馬鹿力』リスナー(『大岡越前』好きって設定は良くわからないけど)。そういえば、『失踪HOLIDAY』の方で食べ物の夢を見るシーンがあるんだけど、あれは『だめにんげんだもの』コーナーでのまげまげさんの名作ネタ“ケーキが逃げてく夢”がベースにあるんじゃないかと思ってみたり。
ま、『失踪HOLIDAY』なんかも、ライトノベルだと思ってナメてて*1、実はなんでもなかったんですよぉ、ほのぼのぉ…ってとこに落ち着かせるのかと思いきや“そう来るかぁ”だったし*2、いや、きちんと満足させる作品じゃないでしょうか。はい。


俺内ランキング(2006.3.15現在)

  1. 『失踪HOLIDAY』:乙一(書籍)
  2. 『りんごの泪』:人間椅子:『30-35 vol.7〜「イカ天」特集』より(懐かし音楽)
  3. 牛乳でおいしくホットなココアのCMの藤井美菜(芸能人)*3
  4. 小野寺歩 心に響いた励まし』:NumberWebより(WEB)
  5. ヤングマウンテン富三郎:『深夜の馬鹿力』での伊集院光(変読)*4
  6. 『あさねぼう』:グレイトリッチーズ:『30-35 vol.7〜「イカ天」特集』より(懐かし音楽)
  7. ライスバーガー カツカレー:モスバーガー(食品)
  8. 海保知里:TBS(アナウンサー)
  9. ターキーブレスト:サブウェイ(食品)
  10. 『エヴリデイ』:Jitterin’ Jinn:『30-35 vol.7〜「イカ天」特集』より(懐かし音楽)

次点:日本×アメリカ:WBC2次予選(プロ野球*5

*1:ライトノベルが何だと思ってるんだ?俺は

*2:予想出来なくは無いんだけど

*3:ブルボンのサイトにて。『シムソンズ』鑑賞後にこのCM観たのは初めてだったんだけど、改めて観ると曲や映画のシーンの挿入はあるものの、映画のキャラとCMのキャラとはリンクしてはいないのね。どっちも良いんですけどね

*4:ビクトリーニュー太郎は変読界では古くからの定番ネタだけど、こっちは新鮮だった

*5:野球なんで現状のルールでは審判が絶対になってしまうのは誤審を含めてしょうがないと思う。たしかにあの場面の判定をすべきなのは球審なのかもしれない。でも、あのタイミングで遠くにいた人が判定を覆すなんて事、何言っても納得できる人いないでしょ。とりあえずこうなったらもうなんとしても優勝してもらって、“あの一件への反骨がこの優勝への踏み台になった”ってなドラマにしてもらうしかやりきれない!