乙一『暗黒童話』

乙一がはじめて書いた長編がこれなんだとか。事故により片目と記憶を失った菜深は、移植された左目によって見せられる、過去にその目が見た映像により、ある姉弟とある事件を知り、その映像の場所へと向かう、と言うところからはじまるストーリー。私にとって乙一は、わかりやすく『GOTH』から入ったため、ホラー作家だという認識ではある(あとがきにあるように“せつなさの達人”としてしか見ていない事はない)んですけど、すみません、作中の童話での鴉が目を取りにいくエピソードとか、人を傷つける場面とか、そのあとの内臓系の描写とかだめでしたぁ。ホラーものって“精神的な怖さモノ”は全然平気というかむしろ好きなんですが、なにか体に傷がつくようなぐちゃぐちゃモノはだめなんです。ちょっと斜め読みしてしまった。
ただ、それ以外の世界観はまさに乙一の独特のワールド。胸が苦しくなるようなせつない気持ちを抱えていながらそれでも淡々と、ゆっくりと何もない時間が過ぎていく感覚。この本で言うと喫茶店“憂鬱の森”でのシーン。活気があるわけでもなく、申し合わせるわけでもないのに集まってくる面々が何かするわけでもなく顔をあわせる。菜深は左目に過去の映像を見せられたり、そこで知り得る以外の和弥(元の目の持ち主)の過去を教えられたり、青い煉瓦の屋敷の謎をつきとめたりという激動するストーリーを展開しているものの、やはりそのゆっくりした中で生活もしていく。なんか、その絶対有り得ない非日常を主人公が日常と変わらぬペースで消化していくところが、『暗いところで待ち合わせ』*1で視力を失ったミチルとその部屋に忍び込んだアキヒロがそれでも普通に生活を続けていくシーンにつながる気が。そういえば、『暗いところで待ち合わせ』も視力を失った人の描写が非常にリアルに(いや、自分がそうなわけではないのでリアルがどうなのかはわからないんだけど、リアルな感じがしちゃう)書かれていたんだけど、乙一はなんで自分の体験にない世界を書けるんだ。参りました。
本当に最後まで怖い思いだけさせられちゃったら、あとがきにあるみたいに本の中に生ハムやチーズを挟んで図書館に返そうかと思っていましたが、生ハムとチーズはちゃんと食べてきちんと返しました(…あ、ウソだ。今日返すつもりだったけどわすれてた。期限過ぎちゃいますけど、来週には返すんで。。。)。


俺内ランキング(2006.2.24現在)

  1. 『暗黒童話』:乙一(書籍)
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次点:『ちょろちょろちょろちょ〜って』:『深夜の馬鹿力』にてシャワーの音を表現する小林麻耶アナ(名言)

*1:俺内乙一ランキング1位!