角田光代『恋するように旅をして』

偶然書店で見つけた角田光代の紀行文。とはいっても“この人の紀行文がある”というのは聞いていて、以前から探していたもの。『かかとのしたの空』を読んだ事でこういう旅の仕方をする人なんだってのを知って、女性のバックパッカー的な旅行の文章って読んだことないなぁ、と思い興味があったのです。
基本的に、あちこちに書いたアジア中心の旅のエッセイをまとめた&書き下ろしを数本という感じの本であるため、ひとつの旅を出発から帰国まで余すところ無く記録した、というものではなく、いろんな旅のある一部分を切りとって描かれている感じ。それも(アジアの一人旅とかなら必ず起こる)なにかトラブルに巻き込まれた事とかの話ではなく、何も起きない何もしないスローに時間が流れている情景がほとんどであるため、これ読んでると周りの忙しく流れる時間から切り離された気分になって非常に(現実逃避に)良い。よく、こうした国を旅すると、国名を冠して“〇〇時間”と言ういい方(悪く言えば時間にルーズなこと)というけど、話ごとにその国の時間に入り込めます。
特に、ミャンマーマンダレーで朝の電車を逃し、次の電車が夜の6時半だといわれた後の、ツーリストインフォメーション(と言う名の駅の小部屋)で、じいさんと何もしないで過ごす話しはかなり良い味*1。決して、事件に巻き込まれていないわけじゃないんですけどね。モロッコでは荷物を載せたままバスに置いて行かれちゃったり、思いつきでポルトガルに行こうとして、しかし言葉がわからないという事で右往左往したりしてるにも関わらず、そんな中でふと目にとまった光景、息をついた瞬間の方を切り取ってるわけで。結局、これらの事件がどうなっちゃったかは書かれていなくて“おいおい”って突っ込みたくなる事もあるんですけどね。それも“ま、いっか”って感じで、旅先で知り合った日本人とそんなトラブルネタを肴に飲み続けるスローな時間を共有できる。そんな感じの本でした。ちなみに、読み終わって顔をあげたら、うちの駅を3駅通りすぎてました。


俺内ランキング(2006.2.3現在)

  1. 『恋するように旅をして』:角田光代(書籍)
  2. 亀は意外と速く泳ぐ』(映画)
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  7. KREVA貴乃花&セルジオ越後のマネ:『sakusaku』より(ネタ)
  8. 『radio protector』:65daysofstatic『One Time for All Time』より(音楽)
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  10. 『南風』:レミオロメン(音楽)

次点:『サイコロ3〜自律神経完全破壊』:MX『どうでしょうClassic』より(テレビ)

*1:ただ、マンダレーと聞くと、どうもオバ歌謡で流れたなかにし礼作詞の『マンダレーの唄』を思い出しちゃうんだけどね。この曲のせわしなさとは対局の情景