倉知淳『星降り山荘の殺人』

名作といわれているのにまだ読んでいない本を読もうシリーズ〜。シリーズって、こんな事言ったのはじめてですけど。いや、前に進められた事があって、それ以降も書評サイトや掲示板で時々勧められている本なので、そりゃ見とかないかんな、と。
雪に閉ざされた山荘、犯行現場まで雪の上に残る犯人の足跡という、もう小学〇年生の付録の推理ブックかというシチュエーションを今更どう使うんだという感じですが、それを書き方で調理していく展開。基本的には小説ですが、各章の冒頭に必ずコレから起こる事の説明がまとめてあるのは脚本的な作り。その中で書かれる“これに犯人の意図はない”とか“嘘はついていない”などの言葉は間違いではないんだけど、ただそう書かれても本当のことなのかなんて確証はないんだし、また信じたとしても“そう言われるとほかに大事な伏線があるんじゃないか”などと勘ぐってしまい、疑心暗鬼のまま読み進めていく事で成立するミステリ、という事なんですね(実は、あそこ読み飛ばしていったら、本当に普通な推理ブックなのかも)。私的には、人が言うほど“どんでん返し感”はなかったのですが、人によっては“ココはちゃんと読み間違わない様に方向性を正してくれているんだ”と思って読んでたところが、実はミスリードだったという所に“やられたぁ”と思うのかな、と。
ちなみに私的には、こういう閉ざされた空間での連続殺人モノを読んでいる時に“みんな一緒に行動すればいいじゃん”と同じくらい思う“全員が見える所で監視してればいいじゃん”を主人公が実行してくれる所はちょっと良いですね。“やっぱそうするよな”という共感が持てます(上手く行かないけど)。それともう一つ好きだったのは、ストーリーとは別の意味で怪しい奴がいる、という事。UFOウォッチャーという、要はたま出版的な人がいて、現場に怪しいところがあれば“ミステリーサークルだ!”と叫び、実行不可能な殺人は“宇宙人の仕業だ”と言い出す。しかもそれが何の伏線でもないというね。そういう困ったちゃんが無理矢理に解決を遅らせる展開、もどかしく感じる人もいるかもしれないけどちょっと良かったですね。
余談ですが、これ読んでる途中に周りの人から“どういう話?”って聞かれた時、思わず“なかなか人が死んでくれない殺人事件ですねぇ”と答えてしまった。だって、150ページ以上読んでるのに、一向に事件が起きないんだもん。