角田光代『かかとのしたの空』

というわけで、今回の旅友本としてここまで読んできた本です。『みどりの月』という本に収められた中篇2本の中の1本。集英社文庫のこの夏のナツイチフェアで“南の島に行きたくなりました”というPOPで宣伝されていた本。そのため“これを読んで南の島に行きたくなってしまったら大変!”と思い、南の島に行ってから読む事に。
仕事を辞め何もしなくなった夫に別れの予感を感じた夫婦が東南アジア放浪の旅に出るというストーリー。日本での全ての家財道具を捨てて、帰るところを無くした上でバックパック一つで、何を求めるのでもない現実逃避の旅に出ると言うのは誰もが憧れるけど代償が大きすぎて出来ないモノ。それだけに、ちょっとでも現実逃避をしたいという気持ちがある人なら、読みながら“南の島でこういう何も考えない旅をしたいなぁ”となるのかも(あ、ただ、クーラーもバスタブもない安いゲストハウスでというのがダメな人は憧れないかな)。
ちなみに、この本で旅しているのはまずタイのバンコクに入り、一旦北に行った後南下。マレーシアを経由してシンガポール、さらにインドネシアビンタン島と言った国を時には1ヶ月近く同じ場所に留まりながらあてなく放浪している感じ。残念ながらフィリピンは通らないのですが、一応国的には全て行ったことのある国なので雰囲気なんかはわかるかな(ここまでの田舎町は電車で通過するくらいしか経験が無いけど)。
で、この本で書かれている東南アジアの人たちのギラギラした感じは、フィリピンだとマニラなら近い雰囲気なのかもしれないけど、セブはもう少しのんびりしてるかな。それでも、モノ売りなんかは結構いて、車が交差点に止まると子供が窓をノックしてきて“タバコを買わないか”と言ってくる。それを断わると次の子供がやってきて“ライターを買え”と言うみたいな感じ*1。そんなアジアの妖しさの中でこの本を読んだことでちょっとは臨場感を味わいながら読めたかな。ただ、これ読んで“このまま南の島に残りたい”になっちゃマズいんだけどね。

*1:タバコ買ってない時点でライターは買わんだろ