二階堂黎人『奇跡島の不思議』

以前に人に奨められたのか、この本を推薦しているサイトを見た事があったのかの作品(読後に改めてオンライン書店の書評とか見てみると、あまり評判がいい作品ではないようなので、人に聞いたのかも)。今となっては、なんで奨められていたのかも覚えていないのだが、タイトルだけ覚えていたので読んでみた。
美術サークルの仲間たちが無人島に渡った1週間に連続殺人が起こるという。この手の作品はクリスティの『そして誰もいなくなった』と綾辻行人の『十角館の殺人』は読んでるけどほかにどの程度あるんだろう。よくわかりませんが、いわゆる“孤島モノ”である。ただし“いわゆる”な作品なのだが、そのワンパターンに陥らないようにするためか、登場人物の中に推理小説マニアを置いて、作中でこれまでの孤島モノのパターンを語らせている。また、島に渡る前から登場人物たちの会話のなかで“こういう孤島に渡ると殺人鬼がいて連続殺人が起きたりするんだ”みたいな事を語らせて、この作品はそういうパターンには行かないよと言う事をアピールしたりもしている。これって、何かで見た展開だなぁと思っていたら、ホラー映画の『スクリーム』ね。登場人物にホラー映画マニアがいて、ありきたりなホラー映画の展開を語らせるというね。で、『スクリーム』は結局その展開に陥っちゃってくってのもあったりするんだけど、ミステリーの場合、それじゃ面白くなくなってしまいますからね(上手くそれを避けた展開に出来ていたのかは定かではありませんが)。
まぁ、なるほどな感じもありましたし、ストーリーの本筋の所ではない殺人での、小学〇年生の付録の推理ブック的トリックのバカバカしさはわりと好きなんで良かったんじゃないでしょうか。ただ、私がちょっとだけひっかかったのが、この登場人物たち。同じ大学のサークルに所属している8人が島に渡るのだが、とりあえず私だったら、どんなにやりたい事が出来るサークルだったとしても、このメンツだったら辞めちゃうなぁってくらいウザいキャラの奴が少なくとも3〜4人はいる。なんなんだろう。書き方なのかなぁ(二階堂作品を読んだのははじめてなのですが、だとしたらちょっと辛い文体かなぁ)。
で、冒頭にそのメンバーたちが自己紹介ビデオを作っているというシーンがあるのですが、、そういう奴らが好き勝手しゃべっているシーンなため、なんかメンバーに失敗しちゃったコンパに飲み放題の時間いっぱいまでいるような感覚で、読むのがとても辛かったです。一応、登場人物の紹介を兼ねているようなのですが、その後、本編に入ってからもそれぞれの人物の紹介はあるし、そのビデオは結局最後までストーリーには関係ないし、この意味のない繰り返しはナンなんだろう?と思っていたところ、二階堂黎人公式サイトを見てみたらその謎が判明しました。
この作品には冒頭の章とラストの章にA・Bのバージョンがあり、作品になっているのはBバージョンの方なのだと言う。で、そのAバージョンがサイト上に掲載されているのだが、なるほど。Aバージョンの方ならば自己紹介とその後の登場人物紹介とで意味合いが違ってくるから納得できる(キャラがウザいのは一緒だが…)。となると、サイトではA・Bの2つのバージョンがあり選択したみたいな書き方になっているだが、実際はAバージョンで書いたモノが何らかの理由でボツになって、オーソドックスなBバージョンに書きなおしたという感じなのでしょう。私的には、Aバージョンの方でも良かったかなぁと思うんですが、ただ、このパターンだと本を投げつける人も多いでしょうね。そう言う意味では編集時点でダメ出し食らったのかな(となると、Aバージョンの編集云々の記述は、サイトに掲載する際に加筆したんでしょうね。もっとも最初から2バージョンあったっての自体、本当かどうかって話もありますが)。で、このAバージョンのラストでは“真の犯人”が語られているのですが、その話の展開はともかく、その謎の隠し方の手法がミステリーとは別の意味で私の好きなやり方なので、ま、総合評価では“アリ”と言う事で、ひとつ。


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