若竹七海『スクランブル』

この間読んでみて、若竹七海の文体は私的になぜだか読みやすかったという事で2冊目行ってみた。とある私立女子高で起こった殺人事件。それを15年後、仲間の結婚式で再開した面々が事件の真相に迫る…という解説文から、15年後の結婚式が中心となる話なのかと思っていたらそうではなく、結婚式の最中に回想している高校時代の話が中心になる。
夏見、マナミ、洋子、沢登、ラビ、飛鳥の6人の文芸部員が主人公となり、6つの連作短編がそれぞれの視点から書かれる、っていうか通して冒頭の殺人事件の謎を解いていくので、解説でも語られているが長編でしょうこれは(おそらく、6回にわけて連載された話だったため、連作短編という扱いなのでしょう)。この6人、文芸部という事で本が好きで、それゆえミステリも読む事から事件に対してちょっとした推理力を働かせて取り組んでいるという共通点はあるものの、それぞれにキャラが出来ているため、これがアニメやギャルゲーだったらそれぞれにファンがつきそうな感じ。ちなみに、私は前半は夏見に思い入れして読んでましたが、総じてお気に入りは飛鳥かな。
それぞれが、短編の中で細かな問題を解決しつつ、殺人事件の解決も試みようとするのだが、そっちは肝心な所が抜けていて…という感じでミステリとしての展開もしっかりしていくものの、女子高のフツーの女の子同士の会話だったり、高校生ゆえの悩みみたいなのが中心に描かれていて、甘ずっぱほのぼのな感じ。女性が書いているという事もあり“あぁ、女子高ってこんな感じなんだろうなぁ”と思わせてくれます。私は、女子高生だった経験があまりないため、よくわかりませんが。あと、女子高時代の舞台は1980年なんですが、その頃の女子高生が話す音楽や映画や、そしてなにより文芸部という事もあって、(おそらく当時作者が思い入れて読んでいたであろう)本が実名で出てくるのもなんかリアルな女子の会話って感じで良いですね。
私はそんなに本を読んできたわけではないので、わかる本もあれば、むしろ知らなかったり“タイトルだけは…”って感じのが多かったんですが、源氏物語だけはちょっとだけかじり知っててよかったな。(これは主人公の彼女たちから語られる本ではないのですが)冒頭で語られる六条御息所の話しがこんな所で効いてくるとはねぇ。うん。かなり面白かったです。このメンバーでシリーズになってたりしないのかなぁって思ったんですが、残念ながらそれはないみたい。ただし、結構個別にゲスト出演してたりする話があるみたいなんで、次もその辺からまた若竹七海をあさってみるか。


俺内ランキング(2005.5.28現在)*1

  1. スクランブル』:若竹七海(書籍)
  2. 『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』:泡坂妻夫(書籍)
  3. オーケンの散歩マン旅マン』:大槻ケンヂ(書籍)
  4. 東京工業大学のうた』:増田ジゴロウ(音楽)
  5. メンチカツおにぎり:ローソン(食品)
  6. 復刻堂パインサイダー(飲料)
  7. 『OLDK』(映画)
  8. 東京ウォーカーの表紙の相武紗季(芸能人)
  9. 寺田椿のスリッパツッコミ:『イグザンプラー』にて金剛地武志に(技)
  10. ラジオパラダイス復活(情報)

次点:東京工業大学すずかけ台キャンパスの外観(廃墟風建造物)

*1:書籍が1〜3位独占ってはじめてかも。それだけ良い本に立て続けで出会ってるという事で、とてもしあわせな事