若竹 七海『名探偵は密航中』
若竹七海のつながってる連作短編。ストーリーは昭和5年、横濱港を出港し倫敦へ向かう箱根丸という豪華客船の中で進行する。この約50日間の航海のなかで、旅行記を書く事になった鈴木龍三郎の記を中心にその合間で起こった7つの出来事がストーリーとなっている。っていうか、その出来事の後に、その時の船内の様子を記した旅行記が数ページつく感じ。鈴木自身がストーリーに絡む事は無いし、この旅行記もさして面白くも無い。その辺の理由は最後にあったりするのだが、まぁ個人的にはどうでもいい感じ。
話自体もメインはその間で展開する7つのストーリーなんだけど、それぞれ登場人物や視点は変わっていく。が、同じ船内で起こる事なので、微妙にリンクしている人やエピソードなんかもあったりして、そういうリンク好き*1にはたまらん感じだし、なによりこの船の中でそれぞれの話を見て一緒に旅をしている擬似トリップ感を味わえます。ま、さすがに豪華客船の壱等船室での旅なんていうと全然手の届かない世界なんで現実感はないんだけど、寄港する街でのエピソードなんかは“あぁ旅してるなぁ”という感じがするし、特にペナンとかシンガポールは行ったこともある所だったりするので*2、いい感じでしたね。
ストーリーとしては殺人事件や誘拐なんかもあるのだが、そうした王道のミステリだけでなく、幽霊騒動や痴話喧嘩(ま、裏にあるトリックが隠されていたりするのだが…)、お嬢様の脱走騒ぎなどもあっていろいろ。登場人物も、まぁよく一つの船にこれだけいたねってくらい個性的なのだが、そんな中で個人的には、そのお嬢様の脱走を時には手助けし、時には自らのミスで失敗させるという女中のナツという娘。彼女のちょっと抜けているようで、あるところでは実は策士だったりもするというキャラクターがかなり良かったですね。
船上での会話だけだったりで淡々と進むストーリーも多いのですが、なにかと最後にはどんでん返しがあったり、とりとめもないいくつかのエピソードに繋がりが発見されたりと言う感じの話ばかりなので、かなり楽しめました。そしてなにより旅行がしたいぞ!という気分が。そんな私は、実は来週が遅い夏休みだったりするのです。
俺内ランキング(2005.8.31現在)
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