『闇に消えた怪人』×『レディ・ジョーカー』

2〜3年前、グリコ・森永事件も最終時効を迎えてしばらくたった頃、急に自分のなかで“グリコ・森永事件ブーム”が来た事があって、一橋文哉の『闇に消えた怪人』や宮崎学・大谷明宏の『グリコ・森永事件 最重要参考人M』など関連本を読みあさった事がありました。
その流れで買った『レディ・ジョーカー』。グリコ・森永事件を題材にした小説という事だしこのミスの1位もとった作品なんで、意気揚揚と読み始めたのですが、別に約400ページ×2という量に屈したわけではないのだけど、なんか急に“ブーム”が去ってしまって途中になっていました。それが今回、映画になるという事で、なんか映画公開の後で話題になってから読みなおすのもしゃくなんで、公開前に読んでやりましたよ*1
で、読んでの感想なんですが、グリコ・森永事件についての基礎知識を持った上で読むと、実際の事件の「53年テープ」「カップルを誘拐して受取場所に行かせる等の方法を使った身代金受取」などのエピソードや「かつてのグリコ関係者犯人説」「株価操作が目的だった説」「犯人グループが途中で入れ替わった説」「新聞広告は裏取引の合図だった説」などを非常に上手くなぞらえていて、“ひょっとして実際にもこうだったんじゃないか?”とも思わせるなかなかの快作。先にも書いたようにかなり分厚い本なんですが、下巻に入ってからは一気でしたね。この作品、犯人や企業、警察、マスコミなどいろいろな人物の視点から書かれているのですが、やっぱりのめり込むと誰かに肩入れして読んでしまうもの。その“誰か”が誰かによって読後感は違うかもしれないのですが、その点では私は勝ち組だった…かな?と。
で、いろいろ書いてきましたが、ただやはり“実際に起った事件”には勝てないぞってな感じでしょうか。その事件をノンフィクションとして書いてある本の中では個人的に一番信憑性を感じている『闇に消えた怪人』が俺内トップですかね。特に、ずっと読んできて、エピローグの「手紙」の章で「えーっ!こんな事が!」という驚愕。そして、文庫版で加筆された「時効に捧ぐ」もまた新たな事実が。ま、「事実は小説より奇なり」というわけですかね*2
ちなみに、『レディ・ジョーカー』の方。情報量の多さを感じさせない展開ではあるんですが、一点。競馬の描写の細かさ&長さと、登場人物にことごとくクリスチャンがいる設定*3は作者の嗜好や思想からなのでしょうか?*4ここだけ、なんかストーリーから浮いた感じがして鼻につくって言うか、読み進めて行くスピードが止まっちゃうんですよねぇ。これが唯一の難点かな?
で、この長くて情報量の多いストーリー。ホントに映画にまとめられるのか?

*1:前に、上下巻の本読んでるって言ったの、コレね。

*2:なんて、綺麗にまとめたみたいで気持ち悪っ、俺

*3:さらに、ストーリーに“あの”戸来村が出てくるあたりも

*4:って、調べたらこの作者、ICU出身なのね。なるほど。