若竹七海・高野宣李・加門七海『マレー半島すちゃらか紀行』
別の紀行文系を探してブックオフをうろうろしていたら見つけた本。やはり男としては、オーケンの紀行文とか、それこそ定番の『深夜特急』とか(ちゃんと読んでいませんが)の旅なんかにあこがれるもんなので、女性の3人旅てのはどうなんだろう?とも思ったんですけどね。ただ、なんだかんだいって無謀な旅とかしてたのは学生時代だけで、最近は休みも限りあるし、計画通りの旅しかしてないからちょうどいいかもなぁ、と思い購入。それに、チョイ前に読んだ『名探偵は密航中』の原点だったりするかもしれないし。
で、読んでみたら、なんだ。計画はバッチリ建てているものの、いきあたりばったりで予定は変わるし、鉄道のチケットや宿は現地調達だし、かなり面白い旅してるじゃないですか。まぁ、何かあった時に現地の男連中から貴人が現われ、助けてもらえてしまうのなんか(おまけに、3人の年齢からか、そのあとひどいことされたりって事もないし…)は女性の旅でなきゃ有り得ない話だけどね。男が旅行中困ってる時に声かけてくる奴なんざぁ、マトモな奴いないからね。
中身はというと、私もマレー鉄道は西海岸線だけは乗った事ありますし(季節も概ね同じくらい)、おかげで暑さもジャングルの風景なんかも思い浮かびますんで、臨場感ありありで読めました。いいかげんなマレー時間に翻弄される様も、よくわかるし。そこがいいんだけどね。ただ、ラマダンの時期にイスラムの国に行った事はないんで、食堂で観光客だけはフツーに食べてるものの、地元の人は食べ物を前にして日没を待ってるなんて風景は新鮮でした。そこだけはきっちり時間守るのね。
あと、70年前の紀行文をもとに、寂れた街で1件の喫茶店を探すくだりはかなりいい感じでした。特にこういう東南アジアとかの旅の本で、ようやくありついた食べ物の話とか書かれるとすごく美味しそうに見えますから。案の定この喫茶店は見つからなかったんですが、気持ちはわかります。私も今度マレーシアに行くことがあったら、この本で食べてたナシゴレンとか探しそうだし*1。
ちなみに、文庫のあとがきでは、若竹七海はこの後急に方向転換。ロンドンにハマっているという。なるほど、やはりマレー半島を回ってロンドンまで行く『名探偵は密航中』の原点は、多少この旅あったのかな、と。
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