泡坂妻夫『湖底のまつり』

先日読んだ『しあわせの書』に続いて泡坂妻夫の本を読んでみた。
傷ついた紀子がふらっと出た旅先の以前の記憶の面影は有るもののなにかが違う村。そこで、急に増水した川に流されてしまった所を救出され、その男と一夜を共にする。ところが、翌日男の姿は無く、訪れた村の祭りでその男は一月前に毒殺されていた事を知る。
という感じで謎を多く残したまま第1章が終わる。マジックが好きな筆者ではあるが、この謎には大掛かりなトリックなどを仕掛けているような人間は存在しない。ストーリーが物語の視点となる人物と時間軸を前後にずらしながら2章、3章と進んでいき、それに従い自然と事実が判明し、謎が謎で無くなってくる。物語には刑事は登場するものの、刑事の視点から謎を解明していく話ではないため、ストーリーに抑揚が無く淡々と進んでいき、4章の視点から物事が語られ出したあたりで全ての事実がはっきりとしてしまう。そう言うことで言えば、ある意味叙述トリックなのかもしれないけど、そんな段階で謎がわかっちゃうにもかかわらず、ダムの底に沈む村の寂れた祭りを中心とした世界観の妖しい魅力でラストまで持って行かれてしまう。
淡々としているものの、ひきこまれてしまうと一気に読んでしまう話でした。ダムの底に沈む村と、その村の都会に比べると密接ではあるものの表裏のある人間関係。そして、その村で行われる、決して盛り上がるわけでもない、儀式のような祭りという世界観を作り上げた段階で勝ちですね。のどかで不気味な風景が目に浮かぶような話でした。良いです。


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